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【化粧品成分】 フラーレンの皮膚への効果を徹底解説

なつなつ

近年注目を集めている美容成分にフラーレンがあります。本記事ではフラーレンの美容効果について、科学的根拠に基づいて詳しく解説したいと思います!

近年注目度が高まっている美容成分がフラーレンです。その幅広い美容効果からフラーレンを配合する化粧品も年々増えており、私もかなり注目しています。

本記事ではフラーレンの多彩な美容効果について、論文等の科学情報に基づいて分かりやすく解説したいと思います。

ぜひ本記事を参考に、フラーレンの美容効果について勉強してみて下さい!

フラーレンとはどんな成分?

まずはフラーレンとはそもそもどんな成分なのか、基礎的な部分から解説したいと思います。フラーレンの化学構造は以下のようになってます。

構造式

このようにサッカーボールのような球状構造を取っているのがフラーレンの特徴です。フラーレンは炭素のみから形成される二十面体の物質であり、1985年に発見されました。発見されてからまだ35年しか経っていませんので、比較的新しい成分と言えますね。

自然界にはダイヤモンドや鉛筆の黒鉛(グラファイト)など、様々な形状の炭素が存在します。このように同じ元素であるにも関わらず存在形状の異なる物質のことを同素体(どうそたい)と呼びます。フラーレンもこのような炭素の同素体の一つです。恐らく皆さんも高校の化学などで一度は勉強したのではないかと思います。

美容成分の「フラーレン」ってどんな効果があるの? | 品川美容外科 ...

引用:品川美容外科HPより

そしてフラーレンは1996年にノーベル化学賞を受賞しています。もともと炭素にはダイヤモンド・黒鉛(グラファイト)・無定形炭素(石炭など)の3種類の同素体のみが存在すると考えられていましたが、フラーレンの発見はこの仮説を覆すものであり新規性が認められたのです。

ただしノーベル賞を受賞したことが高い美容効果の根拠になるというわけではないのでご注意ください。あくまでこのノーベル賞はフラーレンの「発見」に対して与えられたものです。

POINT
  • フラーレンは球状構造を有する炭素の同素体である
  • フラーレンはノーベル賞を受賞した比較的新しい成分である

化粧品に用いられるフラーレン原料

化粧品に用いられるフラーレン原料には様々な種類がありますが、代表的なものに以下があります。

代表的なフラーレン原料
  • 水溶性フラーレン(水に溶けるフラーレン)
  • 油溶性フラーレン(油に溶けるフラーレン)

フラーレンは炭素そのものですので疎水性が非常に高く、化粧品中で極めて凝集しやすいことが知られています。よってフラーレンの表面を様々な分子でコーティングすることで、水や油に上手く分散するように設計されています。

そしてフラーレンの美容効果を正しく見極めるために重要なポイントとして、化粧品中におけるフラーレンの配合濃度があります。

実は化粧品用のフラーレン原料は複数の成分が混合した複合物として供給されることが一般的であり、この原料中にはフラーレンは極めて低濃度しか含まれていません。

株式会社セララボ代表のかずのすけさんブログの情報によると、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社が製造する原料中には約0.03%程度しかフラーレンは含まれておらず、例えば化粧品中にフラーレンが1%含まれているとすると実際の配合量は0.03×1% = 0.0003%になると指摘されています。

現在販売されているフラーレン配合化粧品には、おおよそ1~5%フラーレン原料が配合されていることが多いです。R.S.マークL.F.マーク1%以上の水溶性・油溶性フラーレンを含む化粧品に付与されるマークですが、これは”原料として1%以上含む”という意味なので注意が必要です。

引用:ビタミンC60バイオリサーチHPより

化粧品の効果を見極める際には、このように実際に含まれている有効な成分量がどの程度あるのか?という視点が重要になるので、フラーレンを一つの良い例として覚えておきましょう。

POINT
  • フラーレンは複数成分が混合された複合原料として提供されている
  • 化粧品中に含まれる実際のフラーレン量は極めて少ない

フラーレンの美容効果

それでは実際にフラーレンの美容効果について、臨床試験を中心とした論文をもとに詳しく解説していきたいと思います。なお効果の解説においては、フラーレンの原料メーカーであるビタミンCバイオリサーチさんのHPも参考にさせて頂きました。

シワの改善効果

フラーレンにはシワ改善効果の可能性報告されています。

こちらの論文では、原料として1%の油溶性フラーレンを23名の日本人女性の顔の半分に1日2回塗布し、もう半分にはプラセボ(フラーレンを含まない美容液)を塗布してその効果の差をランダム化二重盲目比較試験によって検証しています。

その結果フラーレンを8週間使用することで、プラセボに対してシワ面積率や角層水分量が有意に改善したことが報告されています。またフラーレン塗布前後における皮膚の凹凸の有意な改善も報告されており、フラーレンの使用によって皮膚が滑らかに変化した可能性が示唆されています。

またマレーシア プトラ大学のグループによるこちらの論文でも、濃度は不明ですがフラーレンナノエマルションを含む化粧品を1日2回、28日間塗布することで角層水分量の有意な増加コラーゲンスコア(恐らくコラーゲン量を反映)の有意な改善が見られたとの報告があります。

このように異なる2つの報告によって同様のシワ改善傾向が示されており、フラーレンのシワ改善効果のポテンシャルは高そうだと考えられます。

毛穴の改善効果

こちらの論文では、フラーレンによる毛穴面積の縮小が報告されていました。

健康な日本人女性10名に対して原料として1%の水溶性フラーレンを含むローションを1日2回、8週間にわたって塗布し、VISIAと呼ばれる皮膚画像解析装置によって顔の毛穴の面積を算出しました。

その結果、使用前と比較して使用後では毛穴の面積が有意に小さくなっていたことが明らかとなっています。

正直なところ被験者数が少なく対照群もないため、この結果をもってフラーレンが毛穴の縮小に効果的と結論づけるのは難しいと思いますが、このように毛穴を引き締める効果の可能性があることは知っておいても損はないと思います。

色素沈着の抑制効果

色素沈着に対する効果も報告されています。

ビタミンC60バイオリサーチのHPによれば、原料として1%の水溶性フラーレンを含むジェルを1日2回、8週間顔に塗布した結果、皮膚のメラニンインデックス(メラニン量を反映)が有意に低下したことが報告されています。

色素沈着の抑制については、こちらの論文も参考になります。美容整形手術によって得られたヒトの切除皮膚を器官培養という特殊な手法により培養し、ここに水溶性フラーレンを適用して皮膚の変化を観察しています。

その結果フラーレン100μMの添加(これは恐らく化粧品配合量よりも大過剰です)によって、UVA照射後のメラニン生成を22%程度有意に抑制できること、さらにメラニン生成の抑制は組織学的解析でも確認されたことが報告されています。

また細胞レベルの検討ではフラーレンの添加によってメラノサイトのチロシナーゼ(メラニンを作り出す酵素)が抑制されることも示されており、色素沈着抑制のメカニズムも概ね明らかになっています。

これらのデータから推察すると、程度の大小はありますがメカニズムも妥当であることからフラーレンの色素沈着抑制効果の可能性は非常に高いのではないかと考えられます。

その他の効果

その他にも報告数は少ないですが、ニキビに対する効果やCEの成熟による皮膚バリア機能の改善効果皮膚赤みの低減効果などが報告されています。いずれも化粧品として配合され得る濃度のフラーレンによって変化が観察されています。

フラーレンを化粧品として応用している例はまだまだ少ないので研究報告も少ないのですが、ざっと調べた限りでも様々な皮膚トラブルに対して幅広い効果を有する化合物という印象を受けました。

フラーレンの安全性

フラーレンは比較的新しい成分ですので、その安全性については気になるところです。フラーレンの長期連用試験の報告は今のところ無さそうなので断言はできませんが、私はフラーレンの安全性は高いと考えています。

例えばこちらの論文は2012年にPublishされた産総研のチームによるフラーレンの安全性試験結果です。OECDのテストガイドライン(物質の皮膚刺激性・感作性等をテストするための規格化された手法)に基づいた評価において、フラーレンには皮膚刺激性・感作性が認められなかったと報告されています。

ビタミンC60バイオリサーチによるこちらの論文では、油溶性フラーレンを皮膚に適用した際の安全性を詳しく調査しています。フラーレンには光細胞毒性が認められないこと、Ames試験による変異原性が認められないこと、バイオプシーにより採取したヒト皮膚において真皮への浸透が確認されないことなどが報告されています。

化粧品として10年以上の使用実績もありますので、少なくとも化粧品に用いられている濃度範囲であれば皮膚に対する安全性は高いと考えられます。

とはいえ長期的なリスクについてはまだ研究途上であると考えられるので、少しでも身体の不調を感じたら使用を中止することが重要です。

POINT
  • フラーレンはシワ・毛穴・色素沈着など幅広い皮膚トラブルに効果的である可能性が高い
  • 化粧品に配合されているレベルのフラーレン量であれば安全である可能性が高い

フラーレンの美容効果の源泉

以上フラーレンの多彩な美容効果について解説しました。新しい成分とは言え様々な角度から研究がなされており、美容業界においても非常に注目されている成分であることが分かります。

これまで様々なフラーレンの美容効果を示してきましたが、最後にこれらの効果の源泉となるフラーレンの作用について説明します。それが幅広い抗酸化作用です。

私はアンチエイジングにおいて、この抗酸化作用が最も重要であると言っても過言ではないと思っています。ここからは美肌を導くうえで極めて重要な皮膚の酸化・抗酸化について説明したいと思います。

酸化と抗酸化について

酸化色素沈着シワ・たるみ・ニキビ・皮膚バリア低下などあらゆる肌のトラブルに関わっており、これを防ぐ抗酸化が健康的な肌を導くことは有名です。

皮膚において酸化を引き起こす一番の原因は何かというと、紫外線やそれにより発生する活性酸素です。以下には皮膚の中で紫外線によってどのように活性酸素が発生するのかを簡単にまとめました。

細胞のミトコンドリアでは呼吸によって絶えず活性酸素が産生され続けていますが、UVBはミトコンドリアの酵素を活性化することでさらに活性酸素の発生を促進します。またUVAはクロモフォアと呼ばれる光を集める分子(ポルフィリンやフラビンなど)を活性化し、周辺に存在する酸素にエネルギーを移動させることで活性酸素を発生します。

このようにして発生する活性酸素にはヒドロキシラジカル・スーパーオキシドアニオン・過酸化水素・一重項酸素・脂質ラジカル(青字)などがあります。

これらの活性酸素は、皮膚細胞に存在するDNAやタンパク質を攻撃することで皮膚に大きなダメージをもたらします。まさにこれが皮膚の酸化反応の代表例であり、皮膚の糖化もこの酸化反応が起点となって起こります。

そしてこれまでの研究から、この活性酸素がシミやシワ・たるみ・肌荒れ・皮膚バリア低下などの様々な肌トラブルの引き金になっていることが知られており、多くの皮膚トラブルの根本原因に活性酸素が関わっていることが明らかとなっています。

つまり諸悪の根源である活性酸素を除去することが健康的な肌を導く基本であり、このような活性酸素を除去する作用や能力を抗酸化作用・抗酸化力と呼びます。

フラーレンの抗酸化作用

フラーレンは活性酸素を消去する働きに優れていることから、幅広い美容効果を有していると推定されています。

例えばビタミンCビタミンEなども抗酸化作用を有する物質(抗酸化物質)としては有名ですが、これらは基本的に水素原子のやり取りを通して抗酸化作用を持ちます。さらにそれぞれ水溶性・脂溶性の抗酸化物質ですので、ビタミンCは主に細胞の中で、ビタミンEは主に細胞膜で抗酸化作用を持ちます。除去可能な活性酸素種も、抗酸化物質の種類によって異なります。

そしてこれらの抗酸化物質は、自身が皮膚のDNAやタンパク質に代わって酸化されることで活性酸素を消去するという機構を持ちます。つまり一度活性酸素を消去して酸化型になってしまうと基本的には抗酸化作用を失ってしまい、別の抗酸化物質等によって再度還元されなければ再び抗酸化作用を持つようになりません。いわゆる使い捨てタイプの抗酸化物質です。

一方でフラーレンの抗酸化機構はこれら従来の抗酸化物質とは異なるものであり、広い共役系による脱電子あるいは吸着などによって活性酸素を消去すると推定されています。このように根本的に抗酸化メカニズムが異なることから、フラーレンは従来の抗酸化物質と異なる抗酸化作用が発揮されています。

例えばこちらの論文では、フラーレンがビタミンEやビタミンC誘導体と比較して脂質ラジカルや過酸化水素に対して同等以上の抗酸化力を有し、さらに強い光を照射した後にも高い抗酸化力を維持していることが示されています。

従来の抗酸化物質は光によって容易に分解しその機能を失ってしまうものがほとんどですが、フラーレンは光安定性が極めて高く持続的に抗酸化力を発揮することが期待できます。

繰り返しになりますが、抗酸化はアンチエイジングで最も重要な要素であると言っても過言ではありません。このようなフラーレンのユニークな抗酸化作用に着目することで、従来の抗酸化物質の欠点がカバーできる可能性も大きいと考えられます。

日焼け止めで紫外線をカットするのはもちろんのことですが、フラーレンをはじめとしてその他の抗酸化物質を適切に組み合わせながら皮膚の抗酸化力を総合的に高めていくこと将来の美肌を導く近道だと私は考えています。

これらの抗酸化物質は基本的にはビタミンA類のように即効性のある成分ではなく、皮膚にマイナスダメージを与える活性酸素を取り除くための予防ケアとして取り入れていくことが重要です。日焼け止めでカットできなかった紫外線・活性酸素に対する最終防衛ラインとして、毎日のスキンケアに抗酸化ケアをぜひ取り入れてみて下さい。

また化粧品用のフラーレン原料はまだまだ種類が少ないため、フラーレンの表面に様々な修飾を加えたりして抗酸化力や効能をコントロールした新しい原料開発も今まさに行われています。

幅広い抗酸化力はさながら、これから先の原料開発による新規展開にも期待が持てる有望な成分だと思います。

POINT
  • 抗酸化はアンチエイジングにおいて最も重要な要素であると言っても過言ではない
  • フラーレンは従来の抗酸化物質の欠点をカバーできる可能性のある有能な成分である

以上、フラーレンの幅広い美容効果について詳しく解説しました。本記事を参考に、ぜひフラーレンについて勉強してみて下さい。

本記事のまとめ

・フラーレンは幅広い抗酸化作用を有する比較的新しい美容成分である

 

・フラーレンはシワ、毛穴、色素沈着など様々な肌トラブルの改善が期待できる

 

・抗酸化はアンチエイジングに最も重要であり、様々な成分を組み合わせながら予防的に皮膚の抗酸化力を高めていくことが重要である

参考文献・HP

・品川美容外科HP(https://www.shinagawa.com/article/beauty/content_260.html)

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・ビタミンC60バイオリサーチHP(https://www.vc60.com/)

・化粧品成分オンライン「フラーレン」(https://cosmetic-ingredients.org/antioxidant/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%88%90%E5%88%86%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%A8%E6%AF%92%E6%80%A7/)

・ラジカルスポンジ『フラーレン』の効能と誤った認識について(https://ameblo.jp/rik01194/entry-12227944585.html)

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