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【保湿に重要】 肌の天然保湿因子について基礎から分かりやすく解説!

なつなつ

天然保湿因子はセラミドの陰に隠れてあまり一般的には知られていませんが、お肌の保湿に非常に重要です。本記事では皮膚の天然保湿因子について分かりやすく解説します!

天然保湿因子(NMF)はお肌の保湿に非常に重要な因子として有名です。しかしセラミドと比べると天然保湿因子の認知度は低く、天然保湿因子の正体や機能について正しく理解できていない方がほとんどだと思います。

そこで本記事では意外と知られていない、だけどお肌の保湿に非常に重要天然保湿因子(NMF)について、皮膚科学の視点から分かりやすく解説します。

基礎から丁寧に学べる内容にしていますので、ぜひ本記事を参考に天然保湿因子について勉強してみてください。

天然保湿因子とは?

そもそも天然保湿因子とは何なのか?という疑問にまずはお答えしたいと思います。

天然保湿因子とは一言で言えば、お肌の保湿に重要な水溶性分子の総称です。水溶性分子なので水に溶ける成分です。また総称ですので複数の成分から構成されています。

Natural Moisturizing Factorの頭文字を取ってNMFと略することが多く、天然保湿因子=NMFと思って頂いて大丈夫です。

これだけでは中々イメージしにくいので、実際にこちらの論文に基づいて天然保湿因子を構成する成分の一覧をまとめてみました。

成分 割合(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
イオン類(Cl, K+, Na+, Mg2+, Ca2+, PO3- 18.5
糖類・有機酸類・ペプチド・未確認物質 8.5
アンモニア・尿酸・グルコサミン・クレアチン 1.5
クエン酸・ギ酸 0.5
100.0

このように天然保湿因子は様々な成分から構成されていますが、代表的なのは上から4つの成分(アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素)です。これらの成分だけで天然保湿因子の約70%を占めています。

中でもアミノ酸類は全体の40%を占めるため、天然保湿因子の主成分であると言えますね。以下に、天然保湿因子に含まれる主要な4つの成分の化学式を示します。

天然保湿因子の主要な成分は、電子の量が豊富な酸素(元素記号O)窒素(元素記号N)を多く含んでいることが分かりますね。

このように酸素や窒素を多く含む成分は、水(H2O)と強く結合することが知られています。この結合様式は水素結合と呼ばれます。例えば以下のように酸素や窒素の間に水素(元素記号H)を挟んだ形式で、水と強く結合します。

つまり天然保湿因子は、水素結合により皮膚中の水分と強く結合してこれを保持する機能があると言えます。水を強く保持することで水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防ぐことが出来ますよね。

これが天然保湿因子がお肌の保湿に大きく寄与すると言われる理由なのです。

天然保湿因子の生成

次に天然保湿因子がどのようにして作られるのかについて解説します。

そもそも天然保湿因子は角層に存在しており、角層の水分を強く保持することで保湿に重要な役割を果たしています。この天然保湿因子の原料となるのが、表皮の顆粒層(かりゅうそう)で作られるケラトヒアリン顆粒です。ケラトヒアリン顆粒が分解されることで、天然保湿因子の主成分であるアミノ酸とピロリドンカルボン酸が作られます。

以下のセラミドの解説記事でも紹介したように、表皮の顆粒層ではケラトヒアリン顆粒ラメラ顆粒が放出されていました。このうちラメラ顆粒の中には、セラミドを主成分とする細胞間脂質が含まれていましたね。

【基礎から解説】 肌のセラミドの役割を皮膚科学の研究者が徹底解説!

このケラトヒアリン顆粒には、天然保湿因子の原料となるプロフィラグリンというタンパク質が含まれています。プロフィラグリンはフィラグリンと呼ばれるタンパク質が複数結合したものです。プロフィラグリンの状態では、フィラグリンにリン酸が付加していることも分かっています(リン酸化)。

以下のように、ケラトヒアリン顆粒を形成するプロフィラグリンは皮膚中の酵素によってフィラグリン、そしてアミノ酸やピロリドンカルボン酸(PCA)へと徐々に分解されることで、天然保湿因子が合成されるのです。

ちなみに乳酸尿素に由来する天然保湿因子であり、いずれも汗に含まれている成分が角層に定着して天然保湿因子になると推定されています。

アミノ酸やピロリドンカルボン酸が皮膚の中から作られる天然保湿因子であるのに対し、乳酸や尿素は皮膚の外から供給される天然保湿因子と言えますね。

このように由来は様々ですが、天然保湿因子の多くはケラトヒアリン顆粒に含まれるプロフィラグリンから作られています。

天然保湿因子が変化する要因

天然保湿因子は皮膚中の水分と結合することで保湿に寄与していること、フィラグリンが多数結合したプロフィラグリンが分解されることで天然保湿因子が作られることを学びました。

このことから、天然保湿因子やその原料であるフィラグリンが減少すると皮膚の保湿機能が低下することが容易に予想できますよね。実際に様々な要因によって天然保湿因子やフィラグリンの量が減少し、皮膚の保湿機能が低下することが確認されています。

そこでここからは、どのようなことが原因で天然保湿因子の量が変化するのかについて、最新研究も含めてさらに詳しく解説していきたいと思います。

アトピー性皮膚炎

まず最も有名なのがアトピー性皮膚炎です。アトピー性皮膚炎においては、皮膚中の天然保湿因子の量やフィラグリンの量が少ないことが明らかとなっています。

アトピー性皮膚炎と天然保湿因子の関係は非常によく研究されています。その理由は、天然保湿因子の原料となるフィラグリンの遺伝子異常がアトピー性皮膚炎の原因の一つである可能性が示唆されているためです。

これまでに報告されている多数の研究結果によって、アトピー性皮膚炎を発症する患者さんにはフィラグリン遺伝子に変異があることが明らかになっています。

フィラグリンや天然保湿因子の量が少なくなることで皮膚の保湿機能が低下するため、結果として乾燥などの症状が出ます。まさにアトピー性皮膚炎の特徴的な症状ですよね。

詳しくは述べませんが、フィラグリンは天然保湿因子の生成だけでなくその他の皮膚バリア機能維持にも重要であることが分かっています。

つまりフィラグリンの異常がその後の天然保湿因子の生成や皮膚のバリア機能に異常をもたらし、結果としてアトピー性皮膚炎のような症状を引き起こしていると推察されています。

加齢

加齢によっても天然保湿因子の量が減少すると言われています。その結果、角層の水分量が低下し乾燥状態を引き起こします。

老人性乾皮症と呼ばれる加齢性の皮膚疾患では、皮膚が極度に乾燥してかゆみと共にポロポロと剥がれ落ちるのが特徴ですが、その原因の一つとして天然保湿因子の減少が挙げられています。この老人性乾皮症は、冬季の仙台地区では65歳以上の95%が発症しているとも言われるほどメジャーな疾患です。

加齢によって皮膚の保湿機能が低下することをしっかりと理解し、保湿ケアや皮膚科での治療を適切に行う必要がありますね。

乾燥した環境

乾燥した環境がフィラグリンや天然保湿因子の減少を引き起こすことも知られています。こちらの論文では、表皮の培養細胞を乾燥環境にさらすことでフィラグリンや天然保湿因子の量が低下することが明らかとなっています。

フィラグリンや天然保湿因子の低下はさらに乾燥を悪化させるため、いわゆる乾燥の負のスパイラルが回っているような状態になると推定されています。

この結果から考えると、冬などの乾燥する季節においては室内の湿度を高く保つことが、肌の乾燥の更なる悪化を防ぐために重要であると考えられますね。

寒暖差ストレス

天然保湿因子に影響を与える原因として最近注目されているのが寒暖差です。

先ほど天然保湿因子はフィラグリンが分解されて生成すると述べましたが、この分解に関与する皮膚中の酵素がいくつか明らかになっています。代表的なのがカスパーゼ14カルパイン1ブレオマイシン加水分解酵素の3つです。カスパーゼ14とカルパイン1は分解の初期に、ブレオマイシン加水分解酵素は分解の後期に関与すると言われています。

中でもカスパーゼ14はフィラグリンの分解過程において非常に重要と言われており、たくさんの研究が取り組まれています。

こちらのニュースリリースでは、温度低下刺激によって培養皮膚モデルのカスパーゼ14の量が減少することが明らかとなっています。フィラグリンの分解酵素であるカスパーゼ14が減少することで天然保湿因子の量が減少し、結果として乾燥肌肌荒れを引き起こすと推察されていますね。

こちらは最新の研究ではありますが、屋内外の急激な温度変化がフィラグリン分解酵素に影響し、直接的に肌荒れなどに繋がる可能性を支持する初めての結果であると言えます。エアコンの温度を過度に外気温と解離させないなどの工夫によって、カスパーゼ14の減少や天然保湿因子の減少を防ぐことが出来るかもしれません。

ちなみにフィラグリンの分解酵素に関しては、アトピー性皮膚炎との関連も有名です。アトピー性皮膚炎ではフィラグリンの分解後期に関与するブレオマイシン加水分解酵素の量が少なくなっていることが明らかとなっています。

天然保湿因子の原料となるフィラグリンの量だけでなく、これを分解する酵素の量も天然保湿因子の生成量に寄与するため、いずれも皮膚の保湿に重要であると考えられますね。

天然保湿因子は入浴や洗顔でも減少する

このように天然保湿因子は様々な要因によって減少することを学びましたが、実は天然保湿因子は毎日の入浴や洗顔によっても皮膚から流出して減少し続けています。天然保湿因子はすべて水溶性の成分ですので、皮膚を水に浸けるだけでも流出してしまうのです。

このことから、洗顔や入浴において天然保湿因子の溶出を完全に抑制するのは極めて難しいと言えますが、各種メーカーが出来るだけ天然保湿因子の溶出を抑えるような洗浄剤を開発していますね。洗浄剤に含まれる界面活性剤を工夫することで天然保湿因子の流出を抑えることが出来るので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

また半身浴などで長時間入浴すると、それだけ天然保湿因子の流出量も多くなりますので、皮膚の乾燥が引き起こされる可能性があることも頭に入れておきましょう。同じ原理でフェイスパックなどもこれに該当します。メーカーが推奨する時間以上に長くパックをすることは、天然保湿因子の流出の観点からオススメできません。皮膚を水につけるだけでも保湿成分がどんどん失われるということをしっかりと理解しておきましょう。

また失われた天然保湿因子は、外から補うという考え方もあります。天然保湿因子の成分を配合したクリームなども多数販売されていますね。非常によく用いられる保湿剤であるグリセリンも天然保湿因子と同じ機構で保湿に寄与します。グリセリンは水と強く結合するヒドロキシル基を多数有しているので、これが水を保持することで皮膚を保湿します。

このように天然保湿因子は日々失われているということをしっかりと理解し、天然保湿因子の流出を防ぐこと、必要に応じて外から天然保湿因子成分やグリセリンを補うことも非常に重要であると考えられます。

以上、皮膚の天然保湿因子について基礎から応用まで幅広く解説しました。セラミドの陰に隠れて一般にはあまり知られていない天然保湿因子ですが、この記事を通して肌の保湿に非常に重要であることをお分かり頂けたかと思います。

ぜひ本記事を参考に、皮膚の保湿に重要な天然保湿因子について改めて勉強してみてください!

本記事のまとめ

・天然保湿因子にはアミノ酸やピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素などが含まれる

 

・天然保湿因子は水と強く結合し皮膚の保湿に寄与する

 

・天然保湿因子は皮膚を水に浸けるだけでも角層から流出していく

参考文献・ホームページ

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・マルホ皮膚科セミナー2019 (http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-190110.pdf)

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