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【老化の8割?】 肌の光老化とは?現役研究者が分かりやすく解説

なつなつ

肌の老化の8割を占めるとも言われる「光老化」。本記事では、光老化の詳しい原因と対策方法について分かりやすく解説します!

光老化(ひかりろうか)は肌の老化に非常に大きな影響を与えています。

しかし未だに世間における光老化の認知度は低く、その対策も十分になされていないのが現状です。

本記事ではお肌の老化の80%を占めるとも言われる光老化について、その原因と対策方法を研究者視点で分かりやすく解説します。

ぜひ本記事を参考に、光老化について勉強してみてください。

光老化とは?

まずは光老化とはどのような現象を指すのか、基礎から丁寧に解説したいと思います。光老化を説明する際によく例として出されるのが以下の写真です。

こちらはアメリカで28年間トラックドライバーとして働いていた69歳の男性の顔の写真です。

引用:New England Journal of  Medicine,  2012

写真を見ると一目瞭然ですが、写真の左側と比べて右側の方がシワやたるみが圧倒的に悪化しているのが分かると思います。

この男性はアメリカで左ハンドルのトラックを28年間運転していました。つまり、常に顔の左側(画面でいう右側)に太陽光を浴びていたことになりますね。これが深いシワやたるみの原因なのです。

このように太陽光を浴びることで促進される皮膚の老化現象のことを皮膚科学的に光老化(ひかりろうか)と呼びます。

こちらの文献によると、光老化の特徴および定義は主に以下の通りです。

光老化の特徴・定義
  • 光老化は自然老化とは区別された老化現象である
  • 光老化は深いシワ・たるみ・シミなどを伴う
  • 光老化は太陽光を長期間浴びることで徐々に進行する

重要なのは「光老化は自然老化と区別された現象である」という点です。

例えば先ほどの写真の男性は69歳ですが、太陽光を浴びていない左側の皮膚は比較的シワやたるみの少ない肌に見えます。一方で太陽光を浴び続けた画面右側はご覧の通りです。

同じように加齢している肌にも関わらず、太陽光を浴びるか浴びないかでこれほどまでに皮膚の老化度合いが異なります。

つまり太陽光により促進される光老化と、加齢により促進される自然老化は皮膚科学的に全く異なる現象であり、そして場合によっては光老化の方が自然老化よりも圧倒的にインパクトが大きい可能性があると言えますよね。これが光老化という現象の恐ろしさでもあります。

以下に光老化啓発プロジェクト委員会のHPをもとに作成した光老化と自然老化の違いについてまとめました。

参考:光老化啓発プロジェクト HPより再構築

このようにシミやシワの形態、起こる部位などが明確に区別されています。光老化と自然老化は皮膚科学的に異なる現象であることをしっかり押さえておきましょう。

老化に対する光老化の寄与率

実際に光老化が顔の老化全体に対してどの程度の寄与を示すかについて推定した有名な論文があります。

こちらの論文はロレアルが2013年に発表したものであり、美容業界における光老化の認知度を急速に高めました。以下に試験のデザインと結果を簡単に示します(*結構複雑な実験系ですので、詳細なプロトコルや結果は実際の論文をご覧ください)

被験者の情報
  • 30歳から78歳の白人女性298名を調査対象とした。
  • 皮膚科医による臨床検査および質問票に基づいて、過去の日光曝露歴や日光忌避行動歴を調査した。
  • 調査の結果、被験者を日光を多く浴びた群(157名)日光をあまり浴びていない群(141名)に分割した。
試験方法
  • 訓練された12名の専門評価者により、顔の老化特徴を網羅した22の指標(シワ・たるみ・シミなど)に基づいて全被験者をスコア付けした。
  • 上記の老化スコアを2群間で10歳ごとに比較した。

このようにして日光をたくさん浴びてきた被験者あまり浴びてこなかった被験者の顔の老化特徴を、各年代でそれぞれ詳しく評価しています。

その結果、主に以下のような結果が得られています。

試験結果
  • どの年代においても、シワやキメ・色素沈着は日光を浴びた群でスコアが高かった。
  • たるみのスコアは群間で有意な変化はなかった。
  • 60代までにおいて日光を浴びた群では実年齢より約2~5歳老けて見られた(日光を浴びていない群では実年齢とほぼ同年齢に見られた)
  • 日光曝露により影響を受けた指標のスコアを全スコアと比較すると、日光曝露による顔の老化への寄与率は約80%と推定された

上記のようにシワ色素沈着については、ほとんど全ての年代において日光を浴びることによって悪化することが確認されています。

この論文の結果ではたるみについては日光曝露の影響を受けないと推定されていますが、基本的に紫外線曝露により肌の弾性が低下することは多くの研究結果によって示されている事実です。

この論文は目視の評価指標であること、たるみの評価指標がシワや色素沈着に比べて少ないことが2群間の変化を小さくした原因だと個人的に考えています。実際に有意な変化ではありませんでしたが、たるみのスコアは日光を浴びた群で増加傾向にあります。

そして日光を浴びることによる顔の老化特徴への影響を推定すると、約80%になるとのことでした。

正直な所この結果をもって「肌の老化の8割が光老化」と結論付けるのは若干言いすぎな感じもしますが、実はこの他にも同様の主張をする論文はいくつかあります(例えばこちらの論文こちらの論文など)。

そもそも老化に対する光老化の寄与率を求めること自体極めて困難なことです。本当に正しく光老化の寄与率を求めるとしたら、人生で一度も日光を浴びていない人間を作って比較する必要がありますが、そのようなことは事実上不可能であるからです。

この論文は比較的多くの被験者を集め、太陽光が顔の老化に与える影響を可能な限り正確に捉えた初めての論文であると言え、業界の注目を集めました。

とにもかくにも、この論文から太陽光肌の老化に大きな影響を与えていることは間違いないと言えます。日光を浴びることで明確にシワや色素沈着が悪化し、見た目年齢に大きな影響を与えるのは驚きですね。

光老化が起きている皮膚の状態

このように見た目年齢にも大きな影響を与える光老化ですが、光老化の起こった皮膚(深いシワ・たるみ・シミ)ではどのようなことが起こっているのでしょうか?簡単に説明したいと思います。

光老化によるシワ・たるみ

以下の記事でも解説しましたが、基本的にシワたるみといった皮膚の変化は真皮と呼ばれる皮膚の深い位置の変化が原因です。

【アンチエイジング】シワ・たるみの原因と対策を徹底解説

真皮には細胞外マトリックスと呼ばれる線維のタンパク質コラーゲンエラスチンクッションのように張り巡らされています。これらのタンパク質のクッション性によって、肌は正常に弾力を保ちハリを維持しているのです。

一方で光老化した皮膚においては、これらのタンパク質線維が分解され量が減る、さらには線維どうしがデタラメに結合されて形状が固定されてしまうといった現象が起こります。

まさにこのような状態が肌のハリを低下させ、シワやたるみを発生させていると考えられています。

そしてこのような真皮のタンパク質線維にダメージを与える原因が、まさしく太陽光であることも明らかになっています。

特に光老化の進行した肌ではソーラーエラストーシスと呼ばれるエラスチン繊維の異常な凝集が起こっていることは有名です。

光老化した皮膚で起こっている現象については未だその全貌が解明されておらず、まさに最先端レベルで研究が進んでいます。

いずれにせよ、太陽光によって真皮に存在するタンパク質の線維が異常な状態になることが光老化による深いシワ・たるみを引き起こす大きな原因であることはほぼ間違いありません。

光老化によるシミ

通常シミは真皮より上の層である表皮で、メラノサイトと呼ばれる細胞が紫外線によって活性化されることでメラニンを生成し形成されます。

しかし以下の記事でも解説しましたが、表皮は基本的に一定周期でターンオーバーしています。つまり表皮に存在するメラニン(シミ)は一定期間日光を浴びなければ理論上消えてしまうと考えられます。

【勘違い多数】 皮膚のターンオーバーとは?皮膚科学の基礎から徹底解説!

しかし光老化によるシミは少し話が違います。

光老化によるシミを理解するうえで重要になるのが基底膜です。これは真皮と表皮を区切る薄い膜だと思って下さい。

実は光老化によって生じるシミ・色素沈着などは、基本的に真皮部分にメラニンが落ち込んでいると言われています。真皮はターンオーバーが起きないため消えにくいシミになっているのです。

この原因として真皮と表皮を区切る基底膜紫外線などによってダメージを受け、境界を隔てる能力が低下していると推定されています。

紫外線によって表皮細胞でMMP-2MMP-9という酵素が増殖し、この酵素が基底膜を分解することでメラニンが真皮へ移動してしまうのです。

このようにして基底膜が破壊された結果、もともとは表皮に存在するメラニンがターンオーバーしない真皮にも落ちてきてしまい、消えにくいシミとなって残ってしまうのです。

これが光老化による消えないシミの正体であると推定されています。

光老化の対策方法

このように光老化は特に顔のシワ・たるみ・シミに大きな影響を与え、見た目年齢を増加させます。

光老化の対策を行うにはどうすればよいのでしょうか?以下に私の個人的見解を述べたいと思います。

光老化の対策方法
  • 光老化を「予防する」という意識を持ち、若い頃から光老化の対策をする
  • 外出時は基本的に日焼け止め(日焼け止め効果のある化粧下地)を必ず使用する
  • 家の中でも紫外線対策をしっかりと行う
  • 抗酸化物質の豊富な食事やサプリメントを摂取する

光老化対策に対する考え方

まず光老化については考え方からしっかりと見直す必要があると思います。

光老化の特徴は、長期間太陽光を浴びることによって徐々にその症状が進行することにあります。つまり光老化は数日や数か月で急激に悪化するものではないのです。光老化は数十年単位の肌の変化です。

これは逆に「今は変化が感じられないから光老化の対策をしなくても良い」という錯覚を生みます。

しかしこれが大きな間違いです。光老化は「予防すること」が大前提ですひとたび光老化が進行してしまうと、その症状をもとに戻すことは極めて困難なのです。

まずは症状や実感がなくても光老化は予防するものとして対策しなければならないという考え方をしっかり持つことが大切です。

つまり20代、さらには10代から光老化の対策意識を持つことが極めて重要であると言えます。

外出時は必ず日焼け止めを使用する

これまで述べてきたように、光老化の主な原因は太陽光にあると考えられています。よって光老化の具体的な対策方法は太陽光を防ぐこと、基本的にはこれだけです。

外出時には基本的に毎日、曇りの日も雨の日も必ず日焼け止めを使いましょう。女性でメイクをされる方は日焼け止め効果のある化粧下地を使うと良いと思います。

実は光老化の主な原因となるのは太陽光の中でもUVAであると言われており、UVAは冬や曇りの日でも比較的多く地表に降り注いでいることが知られています。

UVA量、UVB量の月間変動

引用:日本ロレアルHP 年間の月別紫外線量

このことから基本的に一年を通してUVA対策は必要であり、外出時には必ず紫外線対策を行うことが非常に重要だと思います。

光老化啓発プロジェクト委員会も、こちらの文献一年を通して日の日焼け止めを使用することを推奨しています。日焼け止めによる紫外線対策を毎日の習慣としてしっかり行うようにしましょう。

家の中でも紫外線対策をしっかり行う

見落としがちなのが家の中での紫外線対策です。

家の中なら紫外線は届いていないのでは!?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、光老化の主な原因となるUVAは窓ガラスを通って家の中にも降り注いでいます。

最初に説明したトラックドライバーの写真も、窓ガラスを通して紫外線が肌へ当たっていたことで光老化を引き起こしたと予想されます。

以下のようなUVカットフィルムを家の窓ガラスの内側に貼り付けておけば、家の中でも紫外線対策がしっかりできるのでオススメです。運転される方は車の窓ガラスにも貼り付けておくと良いでしょう。

抗酸化物質の豊富な食品を摂取する

光老化の原因である真皮のタンパク質線維の異常は、太陽光を浴びることによって活性酸素が発生することで促進されます。

外から浴びる太陽光を日焼け止めで防御することが最も重要ではありますが、日焼け止めだけで排除できない僅かな紫外線の影響を完全にシャットアウトするために、食事による身体の中からの紫外線対策も重要だと私は考えています。

特に真皮層には毛細血管が通っているため、血液による抗酸化物質の送達は真皮の状態を良好に保つために重要であると考えられます。

βカロテンビタミンC・Eは皮膚における代表的な抗酸化物質であり、実際に経口摂取による肌への効果も多数確認されています(参考論文①参考論文②参考論文③)。

私は日々の栄養不足を補うことも考えて、これらの栄養素を含むネイチャーメイドのマルチビタミンサプリメントを毎日1粒摂取しています。

上記のマルチビタミンサプリメントは太陽光の防御によって不足しがちなビタミンDも補うことができるのでオススメです。

またサプリメントによる栄養補給以前に、バランスの取れた食事は美肌にとって大前提です。カロテン類を多く含む緑黄色野菜やビタミンCを多く含む柑橘類などを適切に摂取し、日々の食事から抗酸化物質を摂取することも重要だと思います。

日焼け止めで太陽光をシャットアウトしつつ、身体の中からも紫外線対策を行うという意識を持ちましょう。

本記事のまとめ

以上、本記事では光老化の原因と対策について分かりやすく解説しました。光老化は一度進行すると元に戻すことが極めて難しいです。光老化の原因をしっかりと理解して対策を行いましょう!

・光老化は皮膚科学的に自然老化と区別された現象である

 

・光老化の寄与は大きく、若い頃から光老化を「予防する」意識を持つことが重要である

 

・日焼け止めや抗酸化物質の摂取によって体の内外から紫外線対策を行うことが重要である

参考文献・ホームページ

・New England Journal of Medicine,  2012, 366:e25, Unilateral Dermatoheliosis

・Clin. Cosmet. Investig. Dermatol., 2013, 6. 221–232.

・Cell Transplant,  2018, 27(5), 729–738.

・International Journal of Cosmetic Science, 2010, 32, 330–339.

・FANCLニュースリリース(https://www.fancl.jp/news/pdf/20190121_cxcr4.pdf)

・FUJIFILM Reserch & Development, 2010, 55 (https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2019-10/730e2203a5e669aa05a94de7006b8c6d/rd_report_ff_rd055_008.pdf)

・Dermatology, 1999, 198, 1, 5-10.

・日本香粧品学会誌, 2017,  41, 3, 240–243.

・日本香粧品学会誌, 2017, 41, 2, 113–118.

・日本ロレアル HP 「年間の紫外線量」(http://www.nihon-loreal.jp/uva/uv_ray/year_data.html)

・日本ロレアルHP 「紫外線の多い時間帯と天候、場所」(http://www.nihon-loreal.jp/uva/uv_ray/place_weather.html)

・「光老化」啓発プロジェクト委員会 HP 「光老化と自然老化」(https://www.hikari-rouka.org/column/20200114/)

・Molecular Mechanisms of the Aging Process and Rejuvenation(https://www.intechopen.com/books/molecular-mechanisms-of-the-aging-process-and-rejuvenation/molecular-mechanisms-of-skin-aging-and-rejuvenation)

・Nutrients., 2017,  9(8), 866.

・J. Nutr., 2010, 140(12), 2268–2285.

・Dermatoendocrinol., 2012 , 4(3), 298–307.

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