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【現役研究職が解説】 理系就活における研究概要の書き方

なつなつ

研究職のエントリーシートで必ず求められるのが研究概要です。本記事では、研究概要の正しい書き方を現役の大手メーカー研究員が徹底解説します!

研究職の就職活動で最も重要なのが研究概要です。400字、800字、A4 1枚など様々な形式がありますが、研究職でエントリーする場合には必ずと言っていいほど研究概要が求められます。

しかし研究概要の正しい書き方について解説した記事はほとんどありません。そこで本記事では現在大手メーカーで研究職として勤務する筆者が、大手企業の選考に通過する研究概要の書き方を詳しく解説します。

ちなみに私のエントリーシート通過実績は以下の通りです。

<通過実績:すべて研究職>

JAXA、味の素、キヤノン、東レ、 日産自動車、三菱電機、パナソニック、信越化学工業、AGC(旭硝子)、住友化学、ニコン、コニカミノルタ、リコー、その他大手化粧品メーカー多数

全ての企業において研究概要(A4 1枚や文章)を提出していますが、問題なく通過しています。研究概要の書き方にはポイントがあるので、ぜひ本記事を参考にクオリティの高い研究概要を書いてみてください。

研究概要(A4 1枚)の書き方

早速ですが、研究概要の書き方について解説します。研究概要と言っても400字やA4 1枚など様々な形式がありますが、私のオススメとして800字や400字などの文章形式で書く前にまずはA4 1枚バージョンを完成させる方が良いと思います。

A4 1枚の研究概要の作成を通して研究の背景やポイントを改めて整理し、完成版もとに800字や400字の研究概要を作成すると効果的に文章が書けると思います。

それでは早速ですが、まず研究概要A4 1枚バージョンの例を作ってみましたので以下のサンプルをご覧ください。

このフレームワークに沿って研究概要を書けば、非常に読みやすい構成になります。それでは①~⑤の書き方について一つずつ解説していきたいと思います。

研究タイトル・氏名

まずは最上部の研究タイトルと氏名です。ここは特にアドバイスすることはありませんが、敢えて言うのであれば研究の目的と内容が一言で分かるタイトルにすることが重要です。

例えば皆さんが仮に大学院で「糖尿病性足病変と呼ばれる糖尿病の合併症の血中マーカー遺伝子を特定する」という研究に取り組んでいたとしましょう。その場合の研究概要のタイトルは、以下の2つの場合どちらが良いでしょう?

①miRNAマイクロアレイ法を用いた糖尿病性足病変におけるマーカー遺伝子の解析

 

②糖尿病における合併症の予防を目指した早期診断技術の開発

当然ですが②の方が分かりやすいタイトルですよね。就活の研究概要は学会の要旨ではありませんもちろん学会等では①のように記載すると思いますが、研究概要を審査するのはほとんどが皆さんの研究分野を専門としない研究員です。

そして何百人もの就活生の研究概要に目を通すため、見慣れない専門用語が出てきても基本的に調べることはないでしょう。

この後に続く研究戦略や実験結果の内容ももちろんですが、専門外の研究者にも分かるように専門用語の羅列などの分かりづらい記載は出来るだけ避けましょう。

背景・目的

次に研究の背景と目的を記載します。この部分のポイントは社会的意義の大きい研究として作り上げることです。

企業における研究は、何らかの社会的課題を解決するために行います。大学での研究は基礎的研究も含むため必ず社会の役に立つものとは限りませんが、そうは言っても少なからず何かの役立てる目的がなければ科研費は通りません。

特に就活における研究概要では、研究の背景や目的を「社会課題の解決」「社会に役立てる」という観点で語ると企業における研究の進め方に近く、内容を審査する研究員にも読みやすい内容になります。

自分の研究の背景にある社会問題(健康問題、環境問題、食糧問題など)社会展望(デジタル化、医療の発展、研究の発展など)などを考え、その課題の解決・達成に向けて自身の研究に取り組む、というストーリーを組んでみましょう。

そしてもう一つ重要なポイントがあります。それが先行究における課題も設定することです。

例えば社会課題の解決に対しては、皆さんの研究以外にもこれまで様々な研究が取り組まれているはずです。しかしそういった研究ではさらに何らかの課題があり、そのせいでこれまで社会課題が解決されていなかったのだと思います。

「先行研究の課題を語り、従来の研究では解決できなかった課題を皆さんの研究を通して解決する」というストーリーを立てるのです。

つまり研究背景・目的部分では、課題の2段構成を取ることが重要と言えます。文章で説明するだけでは難しいので、仮の研究内容ではありますが実際に書いてみたいと思います。

<背景・目的>

近年国内における糖尿病の罹患者数は300万人を超え、重大な社会課題となっています。糖尿病の罹患者は毛細血管の閉塞により「糖尿病性足病変」と呼ばれる足に関する健康被害(細菌の感染、変形・タコ、壊疽など)を併発することが知られています。これらの発症予防に向け、従来は医師による診断や画像による経過観察が取られていましたが、外見による発症診断時には既に病変が進行していることが多く、病変発症を早期に診断する手法の開発が望まれていました。そこで本研究では糖尿病性足病変の早期診断に向けて、血液中の成分変化から発症の予測を試みました。

赤字部分が課題の2段構成になっていますね。

このようにまずは大きな社会課題から研究背景に切り込み、既存研究の紹介、そして既存研究の課題を取り上げ、その解決に向けて本研究に取り組むというストーリーを組みましょう。

研究戦略

ここからいよいよ後半部分に入ります。

まずは上記の研究背景を受けて研究戦略の部分を考えます。この部分には皆さんの研究を進める上でポイントとなる考え方(戦略)を記載します。

研究戦略部分は研究内容によって大きく変化しますので特定のアドバイスは非常に難しいですが、実験の具体的な内容を分かりやすく書くこと実験を進める上で自分なりに工夫したポイントを書くことが重要と言えます。

また研究戦略部分は文章だけでなく、その内容を図にまとめて記載することが望ましいでしょう。

研究戦略は研究概要の中で最も重要な部分です。研究を進める上でどのような点に着目したか、どのように工夫して実験を進めたかということは研究者としての資質が問われる部分でり、まさにここに学生の研究スキルが如実に現れます

よく「研究概要は研究成果が伴っていないと書けない」と思っている就活生がいますが、そんなことはありません。むしろ結果が伴っていなくても、研究戦略部分における工夫点や発想などが優れていれば十分質の高い研究概要を書くことが出来ます

研究の工夫点がうまく書けない・・・という方もいるかもしれませんが、その場合は以下のポイントに着目して工夫点を洗い出してみてください。

研究の工夫点を洗い出すポイント
  • 既報から推測される研究の着眼点に新しさは無いか?

例)既報では糖尿病性足病変において、皮膚組織中のリン脂質代謝酵素ホスホリパーゼの発現量が低下することが知られている。そこで脂質代謝に関連する因子が病変発症のマーカーに成り得るのではないかと考え、代表的な血中脂質および脂質輸送に関与するリポタンパク質類を解析した。

  • 実験方法、測定方法に新しさは無いか?

例)糖尿病性足病変における血中成分変化の全容を明らかにするため、メタボロミクス法およびプロテオミクス法による網羅解析を試みた。病変者および健常者の血液サンプルをこれらの手法を用いて解析し、血中代謝物およびタンパク質を網羅的に比較することでマーカーの獲得を試みた。

  • 解析方法に新しさは無いか?

例)糖尿病性足病変患者および健常者の血液サンプルをそれぞれ2000検体取得し、代表的な血中成分を測定した。測定後、ランダムフォレストによる機械学習的手法を用いてこれらの測定値から健常者および病変者を分類する学習モデルを作成し、分類に寄与の大きい因子を算出することでマーカーの選定を試みた。

この部分は当然ながら研究内容に大きく依存します。上記はあくまで一例ではありますが、このような観点で自身の研究の工夫点をしっかりと考えてみてください。

結果と考察

最後に研究結果と考察です。

この部分の書き方も研究内容によって大きく変わりますので一概には言えませんが、あまり詳しく書きすぎないということが重要です。

研究結果は自分の思い入れもあるのでたくさん書いてしまいがちですが、研究概要においてはあくまでシンプルかつ分かりやすい実験結果のみ記載しましょう。

結果が複雑になりすぎて読み手に伝わらないと感じたら、あえて記載しないということも非常に重要です。

私の体感では、A4 1枚の研究概要であれば1つか2つの実験結果を記載すれば十分です。それ以外の研究結果は、面接での研究説明の際に補足すれば良いでしょう。また結果部分も必要であれば図を用いてグラフなどで示してあげることも良いでしょう。

また結果部分の最後には、この研究成果がどのようなことに活かせそうか、再度まとめます。例えば以下のように書くと効果的です。

<結果と考察の締め方>

以上の結果より、糖尿病性足病変における血中マーカーとして有力な分子を特定することに成功しました。本知見は、今後糖尿病性足病変の早期診断法を確立していく上で非常に有益な知見になり得ると考えられます。今後は本知見を活用して、迅速かつ低コストな糖尿病性足病変の早期診断技術の開発に取り組んでいきます。

このように背景・目的部分で示した研究の意義を最後にもう一度示してあげることで、まとまりのある研究概要を作成することが出来ます。

ちなみに今後の展望は書いても書かなくてもOKです。スペースがあれば簡単に書くと良いでしょう。

研究実績

最後に、もし研究実績があればここに記載します。例えば学会発表歴(ポスター発表・オーラル発表)や学会受賞歴(ポスター賞受賞など)、論文投稿歴などです。

企業によってはエントリー時に研究概要とは別途、研究成果の記入欄を設けている場合もありますので、その場合はそちらに研究成果を入力します。

研究成果の入力欄の有無に合わせて、研究概要も「研究成果ありver」「研究成果なしver」の2つを準備しておくとスムーズです。

研究概要(文章バージョン・A4 2枚)の書き方

以上ここまでで研究概要A4 1枚バージョンの書き方を詳細に解説しました。この手順に従って研究を整理すれば分かりやすい研究概要を書くことが出来ますので、是非試してみてください。

次に文章バージョンの研究概要の書き方を解説します。

研究概要文章の書き方は非常に簡単で、基本的にはA4 1枚の研究概要の文章部分を抜き出し、出来るだけ文章の骨格が変わらないように文量を削減していくだけです

文量を削減し、実際に概要を書いていく際には以下のポイントに注意してみてください。

文量削減のポイント
  • 初めに研究の概要(タイトルの部分)を示す
  • 研究背景と目的部分は出来るだけ内容を維持する
  • 細かな実験方法や測定手法の名称などは省略する
  • 結果と考察部分のポイントを要約し、より簡潔に書く

研究概要A4 1枚を文章に変換する際は、背景と目的部分の内容は出来るだけ維持しつつ研究戦略や実験結果の部分をより簡潔に書きます。

これは、研究内容を文章で説明する際に背景や目的がしっかり示されていないと読み手に内容が伝わりづらくなるためです。

その分、文章で説明しにくい実験方法や結果は出来るだけ簡潔に書き上げ、読み終わりをすっきりとさせます。

例えば今回例として挙げた研究概要A4 1枚を400字の研究概要文章に変換させてみます。

<例:研究概要400字>

私は糖尿病における合併症の予防を目指した早期診断技術の開発研究に取り組んでいます。日本の糖尿病罹患者数は300万人を超え、重大な社会問題となっています。糖尿病の罹患者は毛細血管の閉塞により「糖尿病性足病変」と呼ばれる足に関する健康被害(変形・壊疽など)を併発することが知られています。しかし従来の目視による診断時には既に病変が進行していることが多く、病変発症を早期に診断する手法の開発が望まれていました。そこで私は病変患者における血中の代謝物やタンパク質を網羅的に解析し、健常者と比較することで病変の早期診断指標となる因子の特定を試みました。その結果、血液中のホスホリパーゼの発現が病変患者で低下することを初めて明らかにすることに成功しました。本知見は糖尿病性足病変の早期診断において非常に有益な知見になり得ると考えられ、現在はより迅速かつ低コストな診断法の開発に向けて研究を重ねています。(395字)

このように背景や目的はしっかりと語りつつ、実験方法や結果は割とさっぱり書き上げると見やすい研究概要を書くことが出来るのでオススメです。

また研究概要A4 2枚バージョンの提出を求める企業も多いと思います。この場合も、A4 1枚バージョンを基準として内容を肉付けして行けばOKです。

内容の肉付けの際には実験結果を1~2つ付け加え、それに合わせて研究戦略部分の実験の説明や工夫点などを追加します。書き方は上記で説明した通りです。

また背景・目的部分もより詳細な内容を書いて頂いてOKです。A4 1枚バージョンの内容に新しい実験結果を付け加え、そのまま拡張して書き上げるようなイメージで仕上げてみましょう。

研究概要に関するQ & A

以上、研究概要の書き方を丁寧に解説しました。本記事を参考に書いて頂ければクオリティの高い研究概要に仕上がりますので、ぜひチャレンジしてみてください。

なお私は現在、ココナラ で研究職志望の就活生向けに研究概要の添削サービスを行っております。既に多くの就活生の研究概要を添削し、たくさんの満足の声を頂いております。

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最後に研究概要に関して就活生からよく寄せられる質問に解答したいと思います。

研究概要はどの程度の学術レベルで書けばよい?

高校生に説明する程度の学術レベルで書くと良いと思います。研究概要を審査する研究員は必ずしも皆さんの学問領域が専門とは限りません。かといって自分が知らない学術用語を細かく調べることもしませんので、必ず初見の段階で専門外の研究員にも分かるような平易な内容で書く必要があります。

良い実験結果しか載せない方が良い?

できれば良い結果で構成することが好ましいですが、必ずしも良い結果だけでなくてもOKです。失敗した結果でも、研究の戦略や工夫点をより効果的に表現できそうであれば就活の研究概要では使ってもOKだと思います。

学会のポスターなどを研究概要に使いまわしても良い?

学会ポスターを研究概要に使い回すのはオススメしません。先ほども述べましたが、学会の学術レベルでは研究概要として難しすぎるためです。研究概要はあくまで企業に提出するものですので、学会とは別に作り直すことがオススメです。

研究概要A4 1枚で強調したい部分は太字にしたり、赤字にしたり、下線を引いても良い?またオススメのフォントは?

強調したい部分は太字や赤字、下線などで装飾してもOKです。ただし装飾しすぎると逆に見づらくなることがありますので、やり過ぎには注意しましょう。また私はフォントとしてMeiryo UIをダントツでオススメします。文字もかなり見やすく、万能です。

書きたい内容が多く、A4 1枚に書ききれません。

研究概要の本質とは異なる無駄な内容が無いか、もう一度確認してみて下さい。またwordで研究概要を書いている方は、「レイアウト」→「余白」で余白部分の広さを設定してみてください。「やや狭い」を選択するとスペースが大きく空くのでオススメです。

本記事のまとめ

いかがでしたか?恐らく現役研究職の視点からこれだけ詳しく研究概要の書き方を説明した記事はほとんどないと思います。

研究概要は多くの就活生が書き方に悩む設問です。ぜひ本記事を参考に、素敵な研究概要を作り上げて下さい!

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【理系職志望者必見】気を付けたい!実例を交えた『研究概要』解説! – 株式会社Liberty へ返信する コメントをキャンセル

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